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Musashi文庫:2020年第1回 熱源

2020/03/12
むさしぶんこ

Musashi文庫とは……?

 今年で2年目。

 相田・櫻田・長谷川の3名で「本屋大賞候補作」の中から、
 それぞれ2冊ずつピックアップ。

 そして、読んだ人が感想文を公開します。

 そして、三人ともに読み終わったら、Musashi生にも貸し出しします。

 入試に出るかどうかはわかりません。

 読書の楽しさを知って欲しい、そのようなところから企画が始まりました。

今日の作品

熱源  川越 宗一 (著)

[外部サイト]作品詳細(Amazon)

担当:長谷川

主人公は二人。一人目は樺太出身だがロシア領(1875年にロシアと結ばれた樺太千島交換条約ですね。)となり、北海道に移住したアイヌ人のヤヨマネクフ(山辺安之助)。熊送りや、女性の刺青(大人になると入れる風習がありました。)など、アイヌ独自の文化や生活習慣は、消えていく一方、日本が運んできた「文明」が彼らの生活を侵していく。日本の小学校に通うが、差別や偏見を受ける。さらにアイヌ女性と結婚するが、無知による死で妻を亡くしてしまう。北海道で様々な体験をした彼は、生まれ故郷の樺太に帰り、アイヌ独自の文化を守りながら、アイヌの教育にも関わりながら、「滅びゆく民族」と言われた自分のアイデンティティーを探していく。
 もう一人の主人公がリトアニア生まれのポーランド人であるブロニスワフ。ポーランドは、小国であるために隣国に吸収され、幾度となく世界地図から姿を消した国。当時ロシアは、周辺諸国に同化政策をとり、ポーランド語を話すことを禁じる。このような強硬なやり方に反発して、祖国独立を目指し学生運動に参加したブロニスワフだが、皇帝暗殺の濡れ衣を着せられ、拷問の末に樺太(サハリン)に流刑になった。そこで、ギリヤーク(少数民族の原住民)やアイヌ人と出会い、民族学の研究に没頭する。そんな中で、ヤヨマネクフとも出会う。そして彼らとの交流で心を回復させていく、生きると力を取り戻していく。しかし、生きる力を取り戻していくと忘れていた祖国独立への思いが高まっていく。
 「自分の存在価値なんてないんじゃないか」「自分は何のために生きているのか」と迷う人にこそ、お薦めの一冊です。アイヌ人もポーランド人も、存在すら認められず、何度も「文明」や「力」に振り回され、飲み込まれてきました。そんな理不尽な苦境の中でも、ヤヨマネクフもブロニスワフも、一貫してぶれずに自分を貫いていきます。自分が自分であるために…。その姿勢、生き様に生きていくための「熱」をもらえるでしょう。自分もがんばろう、強く生きていこう。そんな思いにさせられる本です。「文明」や「力」とは、押しつけるものでも与えるものではない。では、「力」を持つ国や民族は、少数民族や力のない国を保護して守ればいいのか…。それも違う気がします。何か偉そうですよね。「力」や「文明」は、どのように使うべきか…。みなさんも考えてみてください。